2006年秋、それまで何年も中空式カーボンシャフトアイアンを使い続けてきたアベレージが無謀!!にもスチールシャフトアイアンに変えて、歳甲斐もなくおやじアスリートを夢見たのでした。その辺の事情はすでに【プロギア TR900 forged(フォージド)に変えてみた】(myGear 2007.02)にてご報告させて頂きましたが、今回は、「その結果、どんな波瀾万丈の嵐が渦巻いたか」という顛末記でございます。
秋。ゴルフには絶好の季節。
平均スコアが90台に突入したと思うや否や、あっという間に100の壁の外にはじき飛ばされました。その後、バンカーイップス、ド・スライス病等々、何をやってもうまくいかず悩みの日々。一年にも及ぶ停滞(というより後退)を余儀なくされた時期。
翌年夏、どちらかというと冷夏に近く、ゴルフにも力が入ります。
紆余曲折がいろいろありましたが、意を決してドライバーのフォーム大改造に着手。なんと、それが奏功して徐々にスコアを回復。特にドライバーのフェアウェイキープ率の大幅上昇とOBの減少。再び平均スコア90台を復活したのでした。
そしてその年の晩秋のある日。
いつもの如く「開眼」や「天啓」は突然やってきます。まるで全身を貫くかのように、私にも「魔が射した」のであります。
いつもの雑誌智恵。クラブは振れる範囲で一番重いものがいいという一文にいたく感動したのがことの始まり。それまではクラブのことなどほとんど考慮したことがなかったのでしたが...。衝動買いのようにして手に入れたのがプロギアのスチールシャフトアイアンTR900 Forgedでした。
ずっしりと重く安定感がありますが、重すぎて振れないということはありません。むしろ、しっかり体重移動をしないとうまく当たらない、小手先で打てないことで安心感すら感じます。弾道も高すぎず低すぎず、力強いボールが出ます。芯に当てたときの「えも言えぬ打感のここちよさ」。これがフォージドアイアンなのだ、と、しばし感動でした。
しかし、ちょっとでも打点をはずすと手に「しっぺ返し」を喰らいますし、まともなボールが出てくれません。アベレージおやじには少々「手応えのありすぎる」悍馬でもありました。
今回、変えたのはアイアンTR900 Forged(3I〜PW)に加えてAW/SWの9本です。各番手ともロフトが増え、重量は重くなってシャフトの長さは短くなりました。
項目 | 変更前 | 変更後 | MEMO |
---|---|---|---|
商品名 (すべて PRGR) |
(3I-9I/PW/AW/SW) 905 SPEED IRON |
(3I-9I/PW) TR900 Forged | |
(AW) TR wedge(Forged) 52° | |||
(SW) TR wedge(Forged) 57° | |||
形式 | 中空式/カーボンシャフト M-40 | スチールシャフト M-40 | |
主たる スペック |
(5I) 25°39inch 359g | (5I) 26°37.75inch 400g | |
(7I) 32°37inch 382g | (7I) 33°36.75inch 413g | ||
(PW) 45°45°35.5inch 409g | (PW) 46°35.25inch 436g | ||
(AW) 50°35inch 412g | (AW) 52°35inch 444g バンス10° | ||
(SW) 56°35inch 414g | (SW) 57°35inch 477g バンス14° |
スコアの評価に至る前に、打感・飛距離等、変わったことを列挙してみます。
芯を喰ったときの打感のここちよさ。この快感を覚えてしまったら、フォージドアイアンはやめられません。この快感を感じられるように精進しよう、という気にさせてくれます。
飛距離は全体に5ヤード程短くなりました。同じ番手でもロフトがたってシャフトの長さが短くなっているのですから、当然といえば当然ですが。但し、8I以下では思ったよりキャリーは落ちませんでした。
以前は、スルーザグリーンで使える最も長いアイアンは6番でした。それが、4番や5番アイアンが打てるようになりました。シャフトが短くなったことが理由かも知れません。そして以前よりランが少なくなっているので、状況によっては4番・5番アイアンでもグリーンを狙えるようになりました。特に長いホールでの組み立てが変わってきたようにも思います。
グリーンの状況や風などにもよりますが、ショートアイアンではランがあまり出なくなった分、ピンをデッドに狙うことができるようになりました。距離感があってきて、左右のぶれも小さくなりました。
ゴルフのスコアは日々変わります。同じコースでも、天候・その日のコースセッティング・体調・こころの安定度・メンバー等々、ひとつとして同一条件であることはありませんから、尚更です。その上、フォームを改造した、クラブを変えた、といった条件が加わりますから、「何かをした」ことによる影響の解析、は素人には容易なことではありません。
そこで、今回、アイアンを変えた日を中心として「10プレィ移動平均」(そのプレィ日を含む過去10プレィの単純平均値)を算出してデータの変化を評価することにしました。
例えば、10年分の春・夏・秋・冬のデータがあるとき、4データの移動平均を算出すると、季節変動を除去した年間の数値のトレンドを得ることができます。毎回、大きく変動するデータでも、移動平均値では個々の変動をまるめることができ、値のトレンド(傾向)を評価するのに適した方法です。
前述したように9月初旬にフォームの大改造に着手。それが奏功してフェアウェィキープ率が大幅にアップし、10月にはスコア*(「スコアの10プレィ移動平均」のこと、以下同じ)も再び90台に突入しました。アイアンを変えたのはちょうどその時期でした。
アイアンを変えた日の前後10プレィづつのスコアは下記の通りです。Aコースがホームグラウンド。その他のコースは特に固定していませんが、どちらかというと丘陵コース・山岳コースです。
項目 | 変更前 | 変更後 | ||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
月 | 09 | 09 | 09 | 09 | 09 | 10 | 10 | 10 | 10 | 11 | 11 | 11 | 12 | 12 | 01 | 01 | 01 | 02 | 02 | 02 |
コース | A | A | B | A | A | A | A | C | A | D | A | E | A | A | F | A | A | G | A | B |
スコア | 98 | 106 | 98 | 99 | 99 | 89 | 99 | 101 | 97 | 103 | 99 | 96 | 105 | 97 | 105 | 112 | 94 | 102 | 99 | 91 |
スコア* | 104 | 104 | 104 | 103 | 103 | 101 | 100 | 99 | 99 | 99 | 99 | 98 | 99 | 98 | 99 | 101 | 101 | 101 | 101 | 100 |
バット* | 37 | 37 | 37 | 37 | 37 | 37 | 37 | 37 | 38 | 37 | 37 | 37 | 37 | 37 | 36 | 36 | 37 | 36 | 35 | 35 |
その後、1月に中古クラブショップでドライバー PRGR TR-X 340 Duo を購入。アイアンとドライバーの重心距離を合わせるため、それまで使っていた PRGR TR-X 405 Duo に代えて、あえて、二世代前のドライバーに戻したわけですが、全くタイミングがあわずにOB連発。112 というとんでもないスコアが出た日です。
プレィ翌日、ショップで急遽 405 Duoの一世代前の PRGR TR-X 370 Duo に交換してもらい、スコア的には元に戻した次第。このどたばたのおかげで、スコア*はその後10プレィにわたり +1 になりました。
スコア*をみる限り、結果的にはアイアンを変えた効果が見えません。一時、90台に突入したスコア*も1月にはまた100台に戻りました。もっとも1〜2月は例年、寒さ等プレィコンディションの悪化でスコアを落とすこと、前述のドライバー変更時のどたばたの影響を考慮すると、この時期「これだけのスコアダウンであれば上々」というポジティブシンキングもないではありませんが。
若干、変更後のパット*(「パットの10プレィ移動平均」のこと、以下同じ)が減っていますが、アイアンとの直接関係があるのかどうか。もしかしたら、無駄な努力だった、かも...。
アンアンを変えてスコア*はほとんど変わらないようにみえながら、実際にはゴルフの内容が劇的に変わったことが多々ありました。驚くことに、これらの変化はTR900に変えた初回のラウンドからすぐに現れたのです。
それまで滅多にとれないバーディ、特にショートホールのパーディ取得が増大しました。10プレィに1回程度が2プレィに1回以上になったのですから自分でも驚きです。これは明らかにアイアンショットの直接的な効果でしょう。
項目 | 変更日直前の 10プレィ移動平均 |
変更日から 10プレィ後の移動平均 |
MEMO |
---|---|---|---|
バーディ取得数 | 0.1回/play | 0.6回/play | |
(内、ショートホール) | 0.1回/play | 0.5回/play |
更に3ケ月後。バーディ取得は0.3回/playと少なくなりました。5月にドライバーをデカヘッド変えたことによるアイアンショットへの影響(特にショートホールでのひっかけの多発)だと思われます。
100の壁上にいるアベレージゴルファーが1ラウンドでパーをとれる個数はそう多くはありません。アイアン変更後、その数が5割増となりました。
項目 | 変更日直前の 10プレィ移動平均 |
変更日から 10プレィ後の移動平均 |
MEMO |
---|---|---|---|
パー取得数 | 2回/play | 3回/play | バーディ含まない |
パー以下取得数 | 2.1回/play | 3.6回/play | バーディ含む |
パー取得はアイアンショットだけの問題ではないのですが、よくみますと、この期間、パーオン率がほとんど変わっていません。ということは、パー取得増は、パット数の減少、すなわち寄せワン(1バット)の移動平均が激増したことによる成果でした。
項目 | 変更日直前の 10プレィ移動平均 |
変更日から 10プレィ後の移動平均 |
MEMO |
---|---|---|---|
グリーン上での1パット数 | 3.0回/play | 4.3回/play | 0パット含む |
これは、例えば、アイアンでパーオンをはずしてもグリーンを大きくはずれることが少なくなって、次打のアプローチで1パット圏内にうまく運べている、ということなのでしょう。
この段階でアプローチやパットがうまくなったという実感はありませんが、確かに、グリーン脇からのランニングアプローチ等のイージィショートアプローチ、カラーからパターを使用するケースが格段に増えました。アイアンを変えた効果がこんな形で出たことに驚いている次第です。
変更後8月経過。
1パット数は更によくなって、5回/play程度。パットの総数も34-35を維持しています。なにより、自信をもってパットが打てるようになりました。最近「オリンピック」をやってもほとんど負ける気がしない---ちょっと自信過剰な言いぐさですが、うれしい効果です。
前述の如く、本人にとっては「衝撃的」な出来事になりました。アイアンを変えただけで、こんなにも変わるものでしょうか。しかし、いいことばかりでないのも世の常。ラッキーとアンラッキーは同じ確率でやってきます。
グリーンまで110ヤードの第3打。ここでグリーンオンすれば悪くてもパー。バーであがれば初のハーフ30台、なんて場面で、なんと予想もしない大シャンク。ボールはフェアウエイ右側のOBゾーンに。打ち直しでガードバンカーに突っ込めば、もう悪夢の連鎖以外のなにものでもありません。
シャンク、ミドルアイアン以下の左への引っかけ、ロングアイアンの右へのドスライス等々。大事な場面に限って、それまででは考えられないようなミスショットが出るようになりました。少々バーディやパーが増えても、+4オーバー以上の大叩きが増えては台無しです。むしろマイナス面の方が大きいかも。
項目 | 変更日直前の 10プレィ移動平均 |
変更日から 10プレィ後の移動平均 |
MEMO |
---|---|---|---|
+4オーバー以上 | 0.6回/play | 1.2回/play |
アイアンを変えて8ケ月、翌年の夏。遅い梅雨明けのおかげで、7月は毎週コースにでかけていくゴルフ三昧を続けております。スコア*は97-99。ときとしてドツボにはまる大叩きでの「自滅病」。回数は減ったものの、自滅の度合いはひどくなりました。そして、簡単に100を叩いてしまう「100叩き病」。まだまだこれまでの病は癒えませんし、これからも新たな病に悩まされるに違いありません。
春にドライバーをはやりのデカヘッドに変えました。その後、フェアウェィウッドをチューニングしたりパターをリニューアルしたり。忙しいことでございます。
クラブによってゴルフの内容がこれほどまでに変わるとは思いませんでした。確かにトータルスコアは「期待した程」劇的には変わることはありませんでしたが、詳細を見ると内容がかなり変わってことはみてのとおりです。 4ケ月もすぎてからスコア内容が変わってきた項目もあります。但し、それは必ずしもアイアンを変えたからかどうか、直接的に関連が判らないので、ここでは触れることはしません。
しかし、長い目でみると、今回のアイアンの変更は間違いなく「私のゴルフ全体に大きな影響を及ぼしている」と考えてよさそうです。 願わくば、この決断が、良い意味で私のゴルフの次のステップへの転換点になってくれればいいのですが。
長いゴルフ人生。さまざまな壁が立ちはだかります。そんなとき、クラブセッティングの見直しは必要不可欠。そのためには、やみくもにクラブを変えるのではなく、全体のセッティングの中で調和のとれたクラブにしたり、セッティング全部を変えるという決断も必要です。
また、クラブ変更の影響を測るためには、自分のスコアの記録も不可欠です。今回のようにトータルスコアはあまり変わらないようにみえながら、内容的にはかなり変わっていることもあるわけです。必要最小限でいいですから、エクセル表等を用いて、自分のスコアを分析してみることをお勧めします。
アイアンに限らず、他のクラブを変えてもゴルフの内容は変わります。距離が出る、曲がらない、スコアが格段によくなる魔法の杖を求めて、おやじゴルファーはこれからも巷を徘徊して行くのでしょう。それがクラブメーカーの思うつぼであったとしても...