■幕末秘話■ 家康を祀る日光東照宮には御神体はなかった!?...

−−−−栗山村にある栗山東照宮の正体とは 幕末の謎に迫る−−−−
window close /  拡大画像でスライドショー
        クリックすると拡大画像表示  東照宮で有名な栃木県日光市と八王子が姉妹都市を結んで今年で30年。これは江戸時代、八王子千人同心が日光東照宮の警護を担っていたことによるものですが、この日光東照宮にまつわる秘話をひとつ。

 栃木県は日光から山ひとつ越えた栗山村。鬼怒川の源流近く。鬼怒川温泉から川治温泉を経て車で更に小一時間ほど。山の向こうは尾瀬という秘境秘湯であります。
 その栗山村に「家康を祀った栗山東照宮」なるものがあります。家康を祀ったのはかの有名な日光東照宮のはず(!?)。なぜこんな山奥で「家康なの?」「東照宮なの?」という素朴な疑問が湧いてきて聞き込み調査を開始したのでありました。
今市で買いこんだ地酒 「柏盛」と「3年熟成粕取焼酎」をちびちびやりながら、秘湯川俣温泉の旅館のおかみにお聞きしたところ、おかみが言うところは...
 「幕末のころ。日光東照宮で官軍との戦いになる、というので、家康公の御神体を会津若松まで運ぼうとしたお侍さんがいたんだそうなんですが、日光から御神体を運ぶ途中で、そのお侍さんがここで病気になり亡くなってしまったそうなんです。それで地元の方がね。代々、その御神体をお守りしてきたのだ、そうです。だから日光には家康公の御神体はないんですよ。日光ではご開帳なんてみたことがないですもんね。」
  と、まあ、いかにもありそうな話なのでありました。後日、栗山東照宮がある野門集落に行き、自分の目で確かめてまいりました。
        クリックすると拡大画像表示>
クリックすると拡大画像表示 クリックすると拡大画像表示 クリックすると拡大画像表示
狛犬に守られてひっそりひっそりたたずむ栗山東照宮 日光東照宮とは似ても似つかぬ平家の里の鎮守の森に... 栗山東照宮の来歴を記した立て札
 最近は「村おこし」が盛んで県道から野門集落へ入る道路には「家康の湯」の看板やのぼり旗。ここから更に2キロほど急な坂を登って行く。山間の集落が民宿村として化しているが、季節はずれのせいかそれ程奇異な感じもせず、いま風の「落ち着いた」山間の村。
 集落の小高い森の中に日光東照宮はありました。入り口の鳥居を抜け石段を登ります。家康の御神体は狛犬に守られるようにひっそりとたたずんでいたのでした。
 家康公の御神体(木像)が納められ毎年ご開帳されるようなことが観光パンフレットにありましたが、もちろんこの日は家康公へのご対面はならず。残雪の残る無人の境内をめぐり、そして東照宮の脇の来歴を記した立て札に。
 会津松平藩主肥後守容保から野門村小栗久右衛門なる(おそらく名主)人物に家康公のご神体と男体山三社神体の守護職が命じられた、といいます。当時、上野彰義隊の残党や幕府軍の一部が日光東照宮に立てもこって官軍と一戦する、という主戦論もあって日光東照宮が焼失の危機にあったことから大切な御神体が密かに捧持された、ということのようですね。
 栗山東照宮は昭和45年になって有志の方々によって新たに建立され一般に公開されたのだといいます。では、戊辰戦争から昭和に至るまでの間、このご神体は野門集落のひとびとによって密かに守られてきた、ということなのでしょうか。「明治政府の目を逃れて...」なんてことはいかにもありそうな話ではあります。
 日光東照宮とは比ぶべくもないにしても、日本の歴史を画した徳川家康公の御神体が「村の鎮守さま」にも及ばないのは少々寂しい気がします。それがたとえ「木像」に過ぎないものであったとしても、です。歴史の中で正史ではない裏の歴史とはこんなもんだなあとひとりごちたのでした。
クリックすると拡大画像表示
クリックすると拡大画像表示  旅館のおかみの話とは大分違うようが、こっちもお湯とお酒を充分堪能したあとだから、まあ、よし、としましょう。こうした話が「伝説」になって行くのですからね。

 さて、川俣温泉の手前にあるのが瀬戸合峡。深い谷と紅葉がすばらしいのだそうだが、残念ながら3月じゃあ想像するしかない。そしてその上流にあるのが川俣ダム。100メートルもあるアーチダム。この写真を撮るのに、ダムの管理所の脇から階段を300段降りてまた300段あがりました。帰りも同じ、併せて1200段の階段紀行となりました。
 ダムの上の道路から下流側直下を激写(写真下左)。ダムの表面に金網上の通路があるのが判りますか。これはキャットウォークといって、アーチダムの点検等のための通路なのです。なにせ金網状ですから足の下が全部見える。足がすくみます。
 湛々と水をたたえるダム川俣湖と栗山村指定文化財薬師堂の写真をおまけにつけて、今回の幕末秘話を終わりにしたいと思います。
クリックすると拡大画像表示 クリックすると拡大画像表示 クリックすると拡大画像表示
ダムの下流側直下を撮る。100メートルまっすぐ下へ。 ひっそりたたずむダム湖川俣湖。紅葉の時期はすばらしい、だろうと思う。 3月、川俣湖はまだ一部凍っている
クリックすると拡大画像表示 ■リンク
奥鬼怒を紹介したサイト
栗山東照宮の御神体(野門集落の民宿一乃屋さんのページ)
■リンク
柏盛の片山酒造
  今市市内にある。今回、飲ませて頂いたのは原酒柏盛と3年熟成の粕取焼酎。
 原酒は「秘蔵の逸品」というだけあって、こくのある中に、しかしさらっとした飲みごこち。とにかくうまい。「飲むほどに旨さがさえる」キャッチフレーズ以上。冷やで飲むのだが、あっという間に飲んでしまうのでご注意。すぐなくなる。
  また粕取焼酎の方と言えば、粕取焼酎が酒粕からつくるものだと初めて知った次第。まあ、戦後のイメージがイメージだからね。でも、これが絶品なのよ。常温、生でそのままちびちび舐めるように頂く。お湯なんかで割ったんじゃもったいない。口の中にひろがる芳醇な酒の香り。そう、まるで度の高い日本酒そのもの、という感じ。飲めば飲む程に幸せを感じさせる久々の一品でございました。なにぃ!?、どんな酒でもそうだろう、って?
ふくよ館の前にある栗山村指定文化財薬師堂
■リンク
川俣温泉でお泊まりしたのはふくよ館
おかみが親切。オフロとお食事がとてもよく価格はリーズナブル。この時期、秘湯めぐりの若いカップルも結構多いそうです。ちなみに鬼怒川源流のすぐ側にある露天風呂は混浴でして、雪見酒をしながら若いカップルとお話をする機会があったことを申し添えます。そうそう、朝夕、7時から9時は露天風呂は女性専用。おやじに覗かれる心配はございません。ご安心下さいませ。
■最後に
 「お酒と秘湯とおやじの旅」などとかっこいいサブタイトルを、と思ったのではありましたが、今後、そんな結構な計画もスポンサーもなく(すなわち「続編」の予定もなく)、企画断念致しましたとさ。わずかにスライドショーの題名だけには採用させて頂きましたが...。そんなわけで拡大写真をスライドショーをお楽しみ下さい。
 なお、本ページ作成にあたり「東北の住人さん」の助言を頂きました。改めて御礼申し上げます。
このページのtopへ

【data】当初「八王子同心」の頁に掲載したものを加筆して移したものです(2004.04)
window close